あらすじ
比嘉姉妹シリーズの短編集。
収録されているのは「母に」「あの日の光は今も」「さえづちの眼」の全3編。
母親をめぐる怪異から、UFOにまつわる奇妙な出来事、そして山蛭をきっかけに巻き起こる恐怖まで、それぞれ違った切り口で人知を超えた存在が描かれる。
一見すると独立した話のようでいて、シリーズを読んできた人ならニヤリとするようなつながりも散りばめられている。
感想
「母に」
今回の短編集、まずはこの作品から始まる。
3話とも母親が関わる話なんだけど、最初に「母に」を持ってくるあたりがニクいねぇ。これから始まる3つの物語に、ひとつの共通したテーマを感じさせるような並びになっている。
短編集って、どうしても一話ずつ独立した作品として読んでしまいがちだけど、こういう構成にされると、残りの2話にも自然と意識が向く。単に3つの話を集めただけじゃないところがいい。
「あの日の光は今も」
まさか比嘉姉妹シリーズでUFOの話が出てくるとは!
幽霊や怪異の話はこれまでにもいろいろ読んできたけど、そこにUFOを持ってくるとは思わなかった。澤村伊智、まだこんな方向から攻めてくるのか。
それに、辻村ゆかりと湯水記者が『ずうのめ人形』以前に会っていたというのも面白い。こういう過去の接点が明らかになると、以前に読んだ作品まで思い返したくなるんだよね。
シリーズものを読む楽しみって、こういうところにもある。今回の話を読んだことで、過去作の登場人物たちのつながりが、またひとつ見えてきた。
「さえづちの眼」
表題作で思い出したのが、『などらきの首』に収録されていた「居酒屋脳髄談義」。
あの居酒屋、きっとカガミグループの店だったんだね。こういう細かいところで作品同士がつながってくるのが、たまらない。シリーズを追いかけてきたからこそ気づける仕掛けって、やっぱりうれしいものだ。
それにしても、山蛭を踏みつけただけで、あんなことになるとはねぇ……。いや、本人だって、まさかそんな事態になるなんて思ってもいなかっただろうに。
ほんの些細な出来事が、とんでもない恐怖につながってしまう。運が悪かった、では済まされないけど、じゃあどうすればよかったんだって話だよね。考えれば考えるほど、やりきれない。
考察
今回の短編集を読んで改めて感じたのは、怪異そのものの恐ろしさだけじゃなく、人間が当たり前だと思っている世界の境界線が、案外あやふやなのかもしれないということ。
「母に」では母という身近な存在が物語の中心にあり、「あの日の光は今も」ではUFOという、普段の怪談とは少し違う題材が扱われる。そして表題作では、山の中の小さな出来事が思いもよらない恐怖へとつながっていく。
題材はバラバラなのに、どの話も「自分の知っている世界だけがすべてではない」と突きつけてくるように感じる。何が起こるのか分からないし、何がきっかけになるのかも分からない。だからこそ、怪異に遭遇したときには、こちらの常識なんて簡単に通用しなくなる。
そして、比嘉姉妹シリーズの魅力は、こうした怪異の恐怖だけで終わらないところにもある。過去作とのつながりが少しずつ見えてくることで、この世界には自分がまだ知らない出来事や人物の関係が、もっとたくさん隠れているんじゃないかと思えてくる。
一冊を読み終えたはずなのに、シリーズ全体の世界はむしろ広がっていく。これだから比嘉姉妹シリーズは、刊行順に追いかけるのをやめられないんだよなぁ。

