あらすじ
リハーサルは、シリーズ第1作『リカ』の中でわずかに語られた“過去の事件”に焦点を当てた物語。
雨宮家に勤める家政婦目線でリカのことが語られるが、彼女の異常性が徐々に浮き彫りになっていく。
やがてその関係は歪み、逃れられない状況へと転がり落ちていく――。
感想
『リカ』の中で少しだけ触れられていた過去の事件。
その詳細が描かれることで、「ああ、こういうことだったのか」と繋がる感覚があって面白い。
ただ、読み進めるほどに思う。
リカの狂気性がどんどん際立ってきている。
シリーズを重ねるごとに“怖い存在”から“厄介すぎる存在”へと印象が変わってきて、正直なところ、マジで面倒臭い女だと感じる。
こんな人物、絶対に知り合いたくない。
特に印象的なのが会話。
リカとのやり取りがとにかく噛み合わない。話が通じていないようでいて、本人は全くズレている自覚がない。その違和感が読んでいてかなりイライラする。
でも、そのイライラがそのまま恐怖に繋がっているのが、この作品のうまいところ。
さらに今回も、リカの登場や感情の動きに“臭い”が伴う描写が多く、それが不快感を増幅させている。この演出はかなり効果的だと感じた。
考察
『リハーサル』は、“リカという人物の本質”をより直接的に見せてくる作品だ。
これまでのシリーズでは、リカはどこか得体の知れない存在として描かれていた。
しかし本作では、その内側――思考や行動原理にかなり近い位置まで踏み込んでいる。
特に印象的なのは、“会話のズレ”。
リカは相手の言葉を理解していないわけではない。ただ、それを自分の都合のいい形に解釈し直してしまう。この認識の歪みが、コミュニケーションそのものを成立させなくしている。
つまり恐怖の正体は、「通じないこと」。
話せば分かる、という前提が完全に崩れている相手に対して、人はどうしようもない無力感を抱く。この構造が、読者のイライラと恐怖を同時に引き起こしている。
また、“臭い”の描写も重要な役割を果たしている。
視覚だけでなく嗅覚を想起させることで、リカという存在をより生々しく、そして逃げ場のないものとして感じさせる。この不快なリアリティが、作品全体の恐怖を底上げしている。
『リハーサル』は、リカという存在を“理解に近づけることで、逆に恐ろしくする”一冊だ。
知れば知るほど関わりたくなくなる――そんな人物像が、ここでより鮮明になっている。

