PR

リセット|五十嵐貴久 を読んで

五十嵐貴久「リセット」 読書感想文

あらすじ

リセットは、これまで断片的にしか描かれてこなかった“リカの過去”に深く踏み込んだ一作。
シリーズを通して謎に包まれていた幼少期から若い頃の姿が描かれ、リカという存在がどのように形成されていったのかが少しずつ明らかになっていく。
静かで不穏な空気の中、後の“雨宮リカ”へと繋がる異常性がじわじわと浮かび上がっていく――。


感想

リカの生い立ちの中でも、これまで特に情報が少なかった時代を描いているので、シリーズを追ってきた身としてはかなり興味深かった。

「こういう過去があったのか」と思う部分もあり、リカという人物の輪郭が少しずつ見えてくる感じがある。
ただ、理解が深まるほど恐怖も増していくのが、このシリーズらしいところ。

今回特に不気味だったのは、“ほとんど語らないリカ”。
シリーズの中では強烈な会話や執着が印象的だったけれど、本作ではむしろ静かさが怖い。

何を考えているのか分からない。
感情が見えない。
それなのに、どこか異常さだけは伝わってくる。

この“空白”みたいな不気味さが、今までとはまた違った恐怖を生んでいたと思う。


考察

『リセット』は、“リカ誕生の空白”を描いた作品だ。

これまでのシリーズでは、リカは完成された狂気として存在していた。
しかし本作では、その狂気がどのように形成されていったのか、その“前段階”を覗き見るような感覚がある。

ただ興味深いのは、過去が描かれても、完全には理解できないこと。
普通なら生い立ちを知ることで人物像に説明がつくものだが、リカの場合は逆に「やはり理解できない」という感覚が強くなる。

特に、本作のリカはあまり語らない。
会話が少ないことで内面が読めず、その沈黙自体が不気味さとして機能している。

人は“分からないもの”に恐怖を感じる。
そして『リセット』は、その原始的な恐怖をかなり巧みに使っている作品だと思う。

また、“リセット”というタイトルも印象的だ。
過去をやり直す、あるいは新しく始めるような意味を持つ言葉だが、この作品ではむしろ「何度繰り返しても、本質は変わらない」という不穏さを感じさせる。

『リセット』は、リカという存在をさらに深く掘り下げながらも、決して安心や理解には繋げない。
その“理解不能さ”こそが、このシリーズ最大の恐怖なのだと改めて感じさせる一冊だった。

created by Rinker
¥737 (2026/05/14 17:21:54時点 楽天市場調べ-詳細)

タイトルとURLをコピーしました