好きな作家さんの作品は、放っておいても自主的に読書が進む。
本屋や古本屋に行くと、まずは新刊と企画展示を一通り見て、そのあと好きな作家さんの本を探したりする。
それほど自然に好きな作家さんの本は手に取ってしまう。
ただ定期的に全く知らない作家さんや普段読まないジャンルの本も読みたくなる。
いつも体験している読書とは違う読書体験を渇望してしまう。
そんな時に役に立つのが「オススメ本」である。
読書サイトやYoutubeの書評動画、InstagramやXで流れてくる、誰かがオススメする様々な本の話を参考に読みたい本を決める。
その中でも最近よく耳にするのが本作「方舟」だ。
いわゆる「ドンデン返し」な作品らしい。
最後にひっくり返るって話だね。
あらすじを読む限り、あまり読む気がしなかったんだけど、「オススメ本」に出てきて気になっていたので読んでみることにした。
大学時代の友達と従兄と一緒に山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った三人家族とともに地下建築の中で夜を越すことになった。
翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれた。
さらに地盤に異変が起き、水が流入しはじめた。いずれ地下建築は水没する。
そんな矢先に殺人が起こった。
だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。
生贄には、その犯人がなるべきだ。ーー犯人以外の全員が、そう思った。
タイムリミットまでおよそ1週間。それまでに、僕らは殺人犯を見つけなければならない。
うん。
予定通り最後に「ドンデン返し」があった。
上手にひっくり返ったし、驚いた。
ただそれだけ…というのが僕の感想。
本作は基本的に推理小説。
事件が起きて、その犯人を暴く物語。
地下建築物の中に閉じ込められ、出口もない状況下で、限られた人数の中に犯人がいて、そしてまた誰かが殺される。
特異なのはシチュエーションのみ。
閉じ込められた密閉空間と足元から増す地下水で時間的猶予があまりない、という状況はとても面白い。
だけど、ミステリーというほどのトリックは皆無。
犯人心理を理解できない人たちがバタバタと慌てる中、一人冷静な青年が着実に一つ一つの謎を解いていき、犯人を突き止める。
そして最後にひっくり返る。
この最後の「ドンデン返し」がなかったら、C級の推理小説でしかない。
それにずっと解せなかったのが
・犯人が生贄と共通認識を全員が持っていること
・何の解決もしていないのに皆がダラダラと時間を無駄に過ごす
という2点。
この点はあまりにも納得がいかなかったなぁ。
ちょっと都合が良すぎる感が強すぎるかな。
でも最後の「ドンデン返し」は気持ちよかった。
ダラダラと論ずることなく、最後の2、3ページで全てが覆るひっくり返し方は気持ちよくお見事でした。
みんなが最後にどんな雄叫びをあげたのか想像するとちょっとゾクゾクする。
滑稽だと思ったのは僕だけではないと思う。
好きな人には響く作品なんだと思うけど、僕には少し物足りなかったかなぁ。