なぜか僕は突然「⚪︎⚪︎な気分になりたい」となる。
泣きたい気分になりたくなったり、やる気に満ちた気分になりたくなったり、ボーッと虚無感を感じたくなったり。
たぶん僕だけではなく皆んなもそんな時があるのではないだろうか?
そんな時に解決してくれるのが映画や本だったりする。
普段の自分の生活とはかけ離れた別世界の話に没頭することで、気軽にそんな気分になれる。
で、今回はなぜか「とにかく陰鬱な気分になりたい」と思った。
きっかけはわからない。
謎だ。
ネットでいろいろと調べてみる。
「陰鬱な小説」「陰鬱になる話」
世の中にはそんな気分になりたい人を助けてくれる物語がたくさんあるようで、かなりの数の小説が出てくる。
今回は「とことん」陰鬱になりたかったのでガッツリ読みたかった。
だから長編を探した。
そこでたどり着いたのが本作桐野夏生 著「グロテスク」だ。
上下巻で構成される作品だ。
これならガッツリ読める。
「わたし」の妹「ユリコ」が殺された。そしてしばらくして「わたし」の同級生「和恵」も同じような状況で殺された。
「ユリコ」は誰もが羨む美貌の持ち主。
「和恵」は一流企業に勤めるキャリアウーマン。
二人は皆から一目置かれる女。
その二人が娼婦として殺された。
実際に起きた「東電OL殺人事件」をモチーフに作られた作品
いやいや、期待通り。
それ以上でした。
上下巻二冊でガッツリ読めたし、読了後(というか読書中も)どんより陰鬱になれた。
また長編であるにも関わらず登場人物が少なく読みやすい。
「わたし」妹の「ユリコ」、同級生の「和恵」、そのほかに「ミノル」、「チャン」、「木島先生」息子の「木島高志」くらいだろうか。
そして本作は全編において誰かの日記や告白文、上申書で構成されている。
「わたし」と「ユリコ」の歪んだ姉妹関係から物語は始まり、カースト制が高い女子校での生活を経て、大人になったそれぞれの生活。
出てくる人出てくる人が皆、意地悪でクズである。
クズばかりが出てくる男性の話はよくみるけど、女性がメインとなると少しばかり様子が違う。
皆意地悪なのだ。
淡々と綴られた文章の隅々からいやらしい悪意がじわりじわりと滲み出ていて、とても読んでいて気持ちが悪くそれが心地よい。
女性が読むととても不快に感じるのではないだろうか?という表現も多々あり。
だけど共感する女性も多いだろうなと思う。
男性には理解できない物語があり、すっかり陰鬱になってしまいました。