「つけびの村」
なんとも不思議で意味有り気で意味深で何やら不穏な空気を纏った本作のタイトル。
古本屋の大きな本棚の中で整然と並んでいる背表紙の中からふと目が合った。
作家さんの名前も知らないし、作品名も聞いたことがない。
裏表紙のあらすじを読むと連続放火事件のノンフィクションらしい。
最近はノンフィクションも読み始めているものの、なぜ目が合ったのか理由はわからないけど読んでみるか。
この村では誰もが、誰かの秘密を知っている。
2013年の夏、わずか12人が暮らす山口県の集落で、一夜にして5人の村人が殺害された。
犯人の家に貼られた川柳は「戦慄の犯行予告」として世間を騒がせたが……
それらはすべて「うわさ話」に過ぎなかった。
「山口連続殺人放火事件」の真相解明に挑んだ新世代調査ノンフィクション!
なるほどー。
山口県の小さな集落で連続放火事件が発生し、犯人と思われる人物の家窓に川柳が貼られていた。
文言はこうだ。
「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」
そりゃーセンセーショナルに報道されていたと思う。
ほとんどワイドショーとか見ない僕でも、なんとなく記憶している。
窓に貼られた川柳がとても不気味だったなぁ。
今でもネットで検索するとその窓の画像が出てくるので、興味ある方は検索してみては?
薄っすらと残っている記憶によると、同じ集落に住む村人たちにいじめられて、その報復として一気に数人を殺したという事件だったような気がする。
そういえば瀬々敬久監督の「楽園」という映画を見たときに、今回の「山口連続殺人放火事件」がモチーフになっていたのを思い出した。
映画内でも限界集落の中で起こるいじめに苦悩する犯人が描かれていたのを覚えている。
たぶん、この事件から限界集落の中で生きる難しさとかがフォーカスされるようになったんじゃないかなぁ?
小説や映画でもそんな題材のものも多くなったように思う。
ただ、この作品を読む限り、いじめがあったというのは完全に僕の勘違いなようだ。
当時のワイドショーなどがそんな報道をしていたばかりに、多くの人たちが僕と同じような印象を持って勘違いをしたままの状態だと思う。
多くの事件がそうだよね。
最初はセンセーショナルに面白おかしく報道され、そしてのちに真実が分かり始めた頃は皆興味をなくし、後追い報道もなく、最初のインパクトが強い情報だけが人々の記憶に残っていく。
恐ろしい社会だね〜。
話は変わるけど、本作も作者がまずnoteにて公開して、のちに出版まで話が進んだ作品なんだって。
最近はそんな作家さんも多く輩出されていて、作家を目指す人たちにとっては新しい道筋だ。