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近畿地方のある場所について|背筋 を読んで

背筋 著「近畿地方のある場所について」 読書感想文

約30年前。
「角川ホラー文庫」という新しい文庫レーベルが始動した。
ちょうど日本ホラー小説大賞が生まれて間も無くの頃。
当時はじわじわと人気が広がってきていた「リング」やホラー小説大賞の「パラサイト・イブ」「黒い家」が軒並みヒットして、一大ブームを作っていた。
僕もガッツリ読んでたっけ〜

しばらくしてあまりホラー小説を読まなくなってきていたんだけど、ここんとこ本屋に行くと「ホラーコーナー」が作られていたりして、「あ〜また流行ってきてるんだぁ」くらいの感覚でいました。

程なくして僕はモキュメンタリーというものにハマった。
モック+ドキュメンタリーの造語で、フィクションをドキュメンタリーのように見せることを言うんだけど、これがまたすごく面白いんだよね。
「行方不明展」とか観に行ったり、「イシナガキクエを探しています」とかのTV番組をガッツリ楽しんだ。

で、どうやらこの「近畿地方のある場所について」はモキュメンタリー風の小説らしく、本屋のホラーコーナーではデデンと中心に鎮座していた。
来週から映画も公開されると言うことで、その前に原作を読みたくなってきた。

さて、どんなホラーなんだろ?
楽しみだ。

あらすじ
私、小澤雄也は本書の編集を手掛けた人間。
収録されているテキストは、様々な媒体から抜粋したものであり、その全てが「近畿地方のある場所」に関連している。
なぜこのようなものを発表するに至ったのか。
その背景には、私の極私的な事情が絡んでいる。
それをどうかあなたに語らせてほしい。
私はある人物を探している。
その人物についての情報をお持ちの方はご連絡をいただけないだろうか。

感想
こっわ〜
普段ホラー映画とかもよく見るし、ホラー耐性は結構あると思ってるんだけど、これは怖いわ〜。
仕事が遅くなって帰宅の電車内で本作を読み、駅から自宅までの夜道がとても怖かったのを覚えている。

どう怖いかというと、古典的な日本特有の怪談話をベースに、静かで暗くて重い空気を纏った怪談話で埋め尽くされている。

しかもモキュメンタリーとしての手法も完璧。
これは実話なのか?
と錯覚してしまうほど。
いや、読了後の今でも実話じゃないのかと微かに疑っているほど。
間違いなく現代ホラーを牽引する大作品だ。

断片的な様々な怪談話がツラツラと綴られていて、それぞれが少しづつ絡み合っていき、一つの結果につながっていく。
いや〜実に面白い。

それに怪談話が始まる過程や広がっていく段階を知れたのも面白い。
なるほど〜、怪談話ってこんな感じで広がっていくんだねぇ。

あ、一つ苦言を言うなら。
WEBの情報を掲載している部分。
文庫本ではかなり文字が小さくて読みにくい。
横書きなので仕方ないのだろうが、基本縦書きの中にある横書きは折り返し部分が逆になって読みにくかったなぁ。
まぁ仕方のないことだけどね。

でも、まぁ思う存分怖がれて面白かった。
映画がとても楽しみだ。
申し訳ないけど近畿地方にはしばらく行きたくない。

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