「掏摸」に続いて中村文則を読む。
どうやら本作は「掏摸」の兄妹作品とのこと。
しかも「掏摸」に登場した強烈なキャラクター木崎か出てくると言うので、そりゃあ読まない訳にはいかない。
「掏摸」の中では木崎は悪玉のリーダー。
全てをコントロールする木崎のカッコ良さと言ったら、他に類を見ない。
めちゃくちゃ痺れた!
なんなら悪の世界へ行ってみようかと思わせるほど。
行かないけどね。
その木崎が本作ではどんなカタチで登場してくるのか分からないけど、彼に会いたくて本作を読む。
チョイ役とかだったら怒っちゃうかもな。
組織によって選ばれた、利用価値のある社会的要人の弱みを人工的に作ること、それが鹿島ユリカの「仕事」だった。ある日、彼女は駅の人ごみの中で見知らぬ男から突然、忠告を受ける。
「あの男に関わらない方がいい…何というか、化物なんだ」
男の名は、木崎。不意に鳴り響く部屋の電話、受話器の中から静かに語りかける男の声。
「世界はこれから面白くなる。…あなたを派遣した組織の人間に、そう伝えておくがいい…そのホテルから、無事に出られればの話だが」
圧倒的に美しく輝く強力な「黒」がユリカを照らした時、彼女の逃亡劇は始まった。
果たして木崎は出てきたのか?
その答えはビッグイエスだ!
前作「掏摸」同様、悪玉リーダーとして君臨する木崎が重要な役割で登場する。
ってか「掏摸」も本作「王国」も木崎無しでは成立しない世界の物語。
謎に包まれた木崎がクールに暴れ回る。立ち振る舞いがカッコイイ!
発する言葉もカッコイイ!
もうすっかり木崎の大ファンである。
世界を皆より100くらい高いレイヤーから俯瞰していて、大きな物事を動かしていながら細かいことにまでしっかり見ている。
木崎が起こしていることがいったい何なのかは全く分からないが、その為に「掏摸」の主人公や「王国」の主人公がまんまとコントロールされてるのが気持ち良い。
その主人公達も抗い方が実に良い!
「掏摸」では3人目の絶対に盗めない物を盗んだトリック。
「王国」では絶体絶命の修羅場を巧妙な心理戦でくぐり抜ける痛快さ。
ハラハラドキドキである。
そして、その行動すら見越している木崎の凄さに驚愕。
とにかくスゲーんだ。
セリフもレイヤーが高すぎて何を言ってるのか分からない部分もあるけど、グサリと来るセリフだらけだ。
いやーこんなにシリーズ化を熱望する作品はほかにないなー
マジで書いてくれんかなぁ。