佐藤究の文庫化された作品で、まだこれを読んでなかったので読む。
佐藤究が2004年に佐藤憲胤名義で書いたデビュー作。
純文学作品と言われる本作。
純文学に対して苦手意識があるけど、佐藤究なりの純文学だろうから、きっと面白いはずとある意味挑戦意識を持って読むことにした。
DTPデザイン会社に勤務する主人公。
目の前に投身自殺者が落ちてくるところから物語が始まる。
自殺者と最後に目が合った主人公。
自分には当たらないと「賭け」の意識を持ったことから不思議な力を宿し、ギャンブルにハマっていく。
「生命」と「カネ」を問う哲学的で薬物的な作品。
さすが佐藤究!
である。
純文学に苦手意識がある僕でもちゃんと読めた。
時々意味がわからない箇所もあったけどね。
この人はホントにコトバの魔術師だと思う。
端的で短いコトバを連続するあたりはゾクゾクしたりする。
作中の登場人物が混乱する場面では、同じように読み手の僕も混乱するし、視界がグルグルと回るような錯覚を覚える文章。
読みながら体感できる文章は他にあまり見かけない。
そして作品自体が哲学みたいな内容だ。
あとがきにある言葉がまさにそうだなと思う。
「もしかしたら佐藤究にとって小説は『人類とはなにか?』という問いに関する、ある種の研究発表の場ではないか」
ギャンブルを通して「人類」と「生命」と「金」を考察する。
作品内に見開き2ページで完結する小話がある。
かつて人間は土くれ(土の塊)だった。
雨が降ればドロドロになり、陽が照ればカサカサになる。
天候で姿を変えない蛇の教えに沿って、土くれはサージウス(赤い宝石)を食べた。
すると体に血がめぐり、天候で姿が変わらない体を手に入れた。
それと同時に死を持つことになった。
何とも強烈な話である。
こんな話を突っ込んでくる佐藤究の頭の中をのぞいてみたい。
そして、小難しいところがあるが佐藤究はこれからもずっと読んでいこうと思う。
あ、あと。
主人公がDTPデザイナーで仕事に関する件がちょこちょこと出てくるんだけど、まぁなんだか同業の話が出てくるのは素直に嬉しいね。