僕がこの名作を初めて読んだのは、この作品が1980年に刊行されてから既に6、7年が経った僕が高校生の頃。
当時はこの作品を読むこと自体がカッコよかった。
特に音楽好きな周りの連中は「これぞロックだ!」とか言いながら皆読んでいた。
もちろん僕もその中の一人。
この本を読んで自分なりの意見を持つことがステータスだったし、ふとした会話の中に「コインロッカー・ベイビーズみたいだな」なんて言葉に織り交ぜるのが気持ちよかったりしていた。
それから随分時間が経って、たまたま本屋で見かけた。
「お。懐かしいなぁ」と手にして見たものの、正直内容なんて全く覚えていない。
コインロッカーに捨てられた2人の赤ちゃんが育っていくお話だったというのは、なんとなく記憶に残っているけど、それだけ。
どんなことが起きてどんな結末になったのか全く記憶にない。
さて、あれから40年弱経った今。
当時衝撃を受けてロックを感じた僕が大人になった今、この本を読んで何を感じるんだろうか?という感覚から再読。
コインロッカーに捨てられて一命を取り留めたキクとハシ。
二人は孤児院を経てある夫婦の養子として迎いれられる。
ある日、ハシは母親を探しに家出。
キクは養母と共にハシを探しに東京へ。
その道中に養母が死去。
同じコインロッカーで生まれた二人は、全く違う道を進みそのまま破滅と破壊の道を突き進む。
ちょっと〜、ものすごく読みにくい作品じゃんか!
見開きのページにびっしりと文字が埋め尽くされていて、それがほぼ全ページで、とても読みにくい。
改行がとにかく少なすぎて、空行もほぼなく、指でなぞりながら読まないと今どこを読んでいるのか見失ってしまう。
しかも元々上下巻の作品なのでボリュームもそこそこ。
最初の数ページでヘコタレそうになった。
そして読み終わってまず思ったのは
「これ、高校生の頃の僕はちゃんと読み終えて、ちゃんと理解できてたんだろうか?」
ということ。
カッコつけて読んだ気になっていただけじゃないのか?
文字をつらつらとなぞっていただけではないのか?
読了後はそんな感じで40年前の自分を恥ずかしく思った。
で、作品自体の感想なんだけど。。。。。。
とても簡単には書けない。
これは名作なんだろうか?と疑いたくなるほど気分が悪くなるお話。
狂気と膨大なエネルギーに満ちた作品であることは間違いない。
ちょこちょこ出てくる狂った人たちの愚行。
狂った世界で生き抜く人々の蛮行。
時折出てくる優しすぎる人たちの温情。
まさに強烈なエネルギーに塗れた破滅と破壊の物語。
様々な人たちが生きるこの世界こそが、暗闇と閉鎖感に囲まれたコインロッカーの中なのかもしれない。
ネットで探すとやはり本作の考察がたくさん出てくる。
読了後はこれらの考察を読むのも楽しすぎる。