「苦しいけれども、読まねばならない」
本書の帯にでかでかと書いてあるコピー。
そして「正体で話題の作家・染井為人氏推薦!!」と書いてある。
染井為人推薦と言われれば読まない訳にはいかない。
その昔、およそ三十年くらい昔。
僕が二十五歳くらいの頃、「FBI捜査官」とか「プロファイル」って言葉が流行って、犯罪ドキュメントの類の本がたくさん刊行された。
海外で起きた事件や国内の犯罪ドキュメント。
当時の僕は夢中になって読んでたけど、いつの間にか読まなくなっちゃってて、久々にこの手の本を読むことに。
ただ犯罪ドキュメントを読む際には常に心している言葉がある。
「深溝をのぞく時、深溝もまたこちらをのぞいているのだ」 -ニーチェ
当時読んでいた本の冒頭に書いてあった言葉だ。
1992年3月5日に千葉県市川市でおきた「一家四人惨殺事件」。
犯人の関光彦が三世帯五人家族が住むマンション住居に押し入り、4歳の女児を含む4名を殺害した。
唯一生き残った15歳の少女は「気分転換」という名目で性的暴行を受けた。
この悍ましく残忍な事件を、犯人の生い立ちから事件の全てを記録する。
マジで読んでて気分が悪くなった。
ここまで酷いことを人間ができるもんだろうか?
他人におすすめしたいけど、読むにはそれなりの覚悟がいるから、気軽におすすめもできない作品。
前半は犯人の生い立ちと、事件に至る顛末が克明に記述されている。
そして後半は著者が歩き回った取材の軌跡や、犯人との面会記録が記述されている。
読む限り犯人の生い立ちは大変だ。
親からの虐待などもあり憐れむ心もある。
だけど、それとこれとは話が違う。
だからと言ってこれほどの悪事を働く理由にはならない。
しかも被害者は全く関係のない一家なのだ。
知り合いでもない。
「誰でもよかった」のだ。
あとがきにも書いてあるが、これはノンフィクションだ。
だから犯人が反省して読者の気が晴れる事もないし、残された被害者の気持ちが描かれているわけでもない。
ドラマチックなことは一切なく、ただただ酷い悪行がつらつらと記載されているだけで心から気分が悪くなる。
だけどこの手の本は、読み進めることに抵抗がない。
なぜ?なぜ?と犯人の思考を理解したくなる。
ところが全く理解できない。
理解できないことがわかっていても読んでしまう。
なぜなんだろう?
この手の犯罪ドキュメントを読むと、やはり人間がこの世に生を受けて生き続ける大変さ、そしてその意味や人間の目的を考えることに辿り着く。
そしてそこに正確な回答なんてない。
また他にも犯罪ドキュメントを読んでみようと思う。