罪の境界|薬丸岳 を読んで

薬丸岳 著「罪の境界」 【読書感想文】

さて薬丸岳を読んだ。

▼あらすじ
渋谷スクランブル交差点で発生した無差別通り魔事件。
男性一人が死亡し、若い女性二人が重症。
被害者の一人明香里が覆う苦悩と、犯人の小野寺に興味を持ったジャーナリストが突き止めた事実とは。

▼感想
本書のあとがきにあった言葉をまず引用したい。
「薬丸作品はいつだって容赦ない」
この一言で薬丸岳全作品の感想を述べたことになると思う。
※まだ全作品を読んだわけではないけれど…。

本作も容赦ない。
まず物語が始まって間もなく無差別通り魔事件が発生する。
その唐突さに、まるで自分もスクランブル交差点内にいて、その喧騒に突然巻き込まれたような錯覚を覚えた。
実際にその場にいたら、同じように何が起きているのか把握できずにパニックに陥ること間違いなし。
想像しただけで恐ろしい。

作品のタイトルは「罪の境界」。
つまり罪を犯す境界線はどこなのか?
何が境界線を越えさせる原動力になるのか?
そんな疑問を淡々とかつ心をえぐりながら問うてくる作品。

あとがきにもう一つ印象的な言葉があった。
どうやら薬丸岳が本作刊行時のインタビュー時に話した言葉らしい。
「天災を除き、被害者にも加害者にもならないのは運がいいから」

なるほどぉ。
誰だって被害者にも加害者にもカンタンになれるってことで、そうならないのはその人の気構えや知識や経験などではなく、運だということ。
ふとした事で境界線を越えた自分または何者かが加害者になり被害者にもなる。
なんとも危うい状況である。

そんな危うい世界に僕らは生きているってことを理解しなければならない。

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