虐待と貧困の連鎖から逃れた少年。
私たちはまだ彼の苦しみを何も知らない。
小学校に通わせてもらえず、食事もままならない生活を送る優真。
母親の亜紀は子供を放置し、同棲相手の男に媚びてばかりだ。
最悪な環境のなか、優真への虐待を疑い手を差し伸べるコンビニ店主が現れる。
社会の分断を体現する少年の魂はどこに向かうのか。
社会に蔓延するバイアスを打ち砕く圧倒的リアリズム!
とても見てられないリアル。
子供がなぜこんな目に遭わなければならないのか?
身勝手な親の元に生まれたばかりに、子供に降り注ぐ不幸。
ホントに見てられない。
前半では徹底的にその生活ぶりを突きつけられる。
主人公である小学生の優真目線。
その母親の亜紀目線。
コンビニ店主の目加田目線。
それぞれの目線で物語が進んでいき、優真を取り巻く環境が全て晒される。
どんな思いで彼が生活しているのか、どんな思いで彼を育てながら放置しているのか、どんな思いで彼に捨てるはずの弁当をあげているのか。
その世界はまさに地獄であり、読んでいてムカムカしてくる。
そして後半は里親となった目加田家の中での生活が綴られている。
ようやく学校に行けるようになり、空腹に耐える必要もなくなるのだが、それまでなんの教育もされてこなかった彼は風呂の入り方や歯磨きの仕方から教えてあげなければならなかった。
そもそも風呂に入る理由や歯磨きをする理由すら知らないから、全ての作業が億劫でならない。
そんな子供が普通の社会の中になかなか馴染めない姿は、これもまた見ていてイライラしてくる。
なぜもっと周りが寄り添ってやれないんだ!と。
だけど、きっと僕も同じように自分の価値規範に塗り込めようとするんだろうなぁと思う。
清潔にしろ、学校に行け、友達を作れ、努力をしろ、と。
後書きにもあるが、その価値規範に取り込もうとすることこそが暴力なのかもしれない。
もっと子供が小さい頃に読んでいたら、彼らに接する姿勢も変わっていて、彼らの可能性を広げることができただろうなと軽い後悔をしたりする。
今更遅いけどね。