誓約|薬丸岳 を読んで

薬丸岳 著「誓約」 【読書感想文】

▼あらすじ
仕事も家庭も順風満帆な向井聡。
彼に届いた一通の手紙が人生を狂わす。
「あの男たちは刑務所から出ています」
過去に交わした約束を守るのか、家族を守るのか、その先に見えるものは。

▼感想
薬丸岳らしくない。
薬丸岳異端の書だと思う。
まだ全作品を読んだわけではないけど、実に薬丸岳らしくない。

面白いか面白くないかでいうと、そりゃあ面白い。
ただいつもの薬丸岳を期待して読み始めたものだから、少し肩透かしを食らった感が残ったことは歪めない。

まず薬丸岳にしては珍しく一人称で書かれた作品である。
主人公、向井聡目線で全編描かれている。
だから聡への思い入れが強いまま読み進めることになる。

薬丸岳は常に「被害者」と「加害者」双方に寄り添い、双方の想いを作品に刻む。
どちらに肩入れすることもなく平等な目線で物語を読み進み、そして両者の思いを知ったうえで読者がどう考えるのかを問う作品が多いように思う。
それなのに本作は珍しく一人称である。
まぁ、そのおかげでミステリ感は強くなり、物語の進行は面白くなっている。
これはこれでアリかも、と思った。

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