【読書】桐野夏生著「日没」
この本もほぼジャケ買い。
でも読み始めるとグイグイと引っ張られる感はさすが桐野夏生作品。
主人公のマッツ夢井は小説作家。
彼女の元に文化文芸倫理向上委員会ってとこから「あなたの作品にクレームが入ってるので一回来てください」みたいな召喚状が届いて、そこへ出向くと「正しい小説を書けるようになるまで更正療養所にいてください」みたいな事になる怖〜いお話。
国が認めるお利口さんな小説家に生まれ変わってくださいと軟禁されながらいろいろ強要される様は恐ろしい。
文章自体が主人公目線なので、何もわからない状態から話が進み、自分がどういう状態にあるのか訳が分からなくなり、何を信じて何を拒めば良いのか分からなくなる。
文学が持つ責任や、秩序をどう判断してどう解決していくのか。
もし、こんな世界がホントに来たとしたら恐ろしい世界が待ってる。
今はまだ作家さんが好きに書いた本を読めるだけでも、幸せな国や時代に生かされてるんだねぇ。
「良い小説」とは「作家自身に正直な小説」だとセリフがある。
読者側には立っていない思考。
つまり、自分が書きたいこと、自分が心を打たれるものでないと世に出す価値はないという発想。
とても共感できる。
僕のデザイン業も同じだ。
まずは自分が納得いくものでないと、お客様や世間には出すべきでは無い。
仕事思考と絡めながら読み進めて面白い作品でした。