平野啓一郎 著「本心」
舞台は2040年代。
今からちょっとだけ未来のお話。
自らの意思で死ぬ事ができる「自由死」が法的に認められている世界。
「もう十分だ」と言いながら「自由死」を選択する母。
最後のその瞬間に愛する息子を目に焼き付けたいらしい。
もちろん息子は大反対。
「自由死」には家族の同意も必要なので、結局母は自由死を実行できずにいたが、その後息子が仕事で出張中に事故で死んでしまう。
最後は息子に見守られながら死にたかった母は、結局見ず知らずの医者や看護婦に見下ろされながら死んでしまった。
息子は「バーチャルフィギュア」と言われるサービスで母を仮想空間で制作。
バーチャルフィギュアは生前の母が残した写真や日記、ブログや日記、SNSなどの情報から、本物そっくりに作られ、息子や他人との会話からどんどん精度を増す。
そのVFの母との対話から母の本心を探ろうとする息子の成長記。
バーチャルフィギュアの制作工程やメタバース時代など、実際に現実化しそうな世界観は読んでいてとても面白いしワクワクもする。
早くこんな世界が来ないかなぁと期待もうずく。
実際に仮想空間で初めて母と再開するシーンは少し泣けたりする。
こんなサービスがあったらとても面白いだろうし、寂しさを紛らわすことも簡単になるんだと思う。
しかしヒトという生き物は「愛とは?」の答えを求め続ける生き物なんだね。