素晴らしく面白い小説だった!
少女を惨殺した犯人は16歳の未成年。
衝撃的な事件内容と少年法に守られた犯人ということで、この事件は世間の注目を浴びる。
そんな最中に雑誌社が犯人の実名を報道。
正義の鉄槌というやつ。
犯人の名は大山正紀。
多くの人がその名を知ることになり注目度もアップ。
SNSやテレビでは多くの人が犯人を名指しで批判した。
そんな時、日本中にたくさんいる同姓同名の「大山正紀」は、自分が世間から非難されるような文章や言葉を目にすることから様々な影響を受けることになる。
ある「大山正紀」は推薦入学を取り消され、ある者は犯人と勝手に思われ、ある者は恋愛成就直前で女性から毛嫌いされ、内定を取り消され…と皆散々な目にあう。
そして最終的に「大山正紀」は「大山正紀」を殺してしまう。
登場人物は全て「大山正紀」。
どの「大山正紀」がどの「大山正紀」を殺してしまうのか?その理由は?
作品冒頭に「大山正紀」が「大山正紀」を殺したという新聞記事が載ってるので、どういう事????と思いながら読み始めることになるこの作品。
読んでいる最中も、今この話をしているのはどの「大山正紀」だ?
と混乱をきたす。
それが実に巧妙で、しかし訳が分からなくなるほど混乱することも無く、キチンと文章として成立していて、訳が分からなくなりすぎて興味を失わせることも無い。
ただこの作品の裏テーマは深い。
いわゆる「正義マン」の存在を堂々と否定する本作品に爽快感すら感じる。
何重にも重なった同姓同名トリックにまんまとハマった面白い作品でした。
読み終えて思うんだけど、実際に凶悪犯と同じ名前だったらと思うと恐怖でしかない。
とりあえず、ネットで自分の名前を検索してみたくなる😆